北欧暮らし - 序章

孤立したように感じられるこの国で、底をついた日本食の棚を見てため息ついています、それでもこの国、好きになって来ました

このブログは新サイトでゆったりと継続させていただいております。 https://hokuomachikado.blogspot.com/

深緑の森の奥で見つけたインダストリアル・スタイル アルフレッド・ノーベル氏が遺したもの

 「是非、見せたいところがあるの」

 

 森を一緒に散歩した友人が言った。

 彼女は深緑の森の中をグングンと歩いて行き、私は彼女の後ろを追った。

 季節は夏の真っ盛り。

 

 そして彼女は赤い煉瓦の建物の前で立ち止まった。

 

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Winterviken

 「ここはアルフレッド・ノーベル氏の硫酸工場を改造したカフェなの」

 「ノーベル賞のアルフレッド・ノーベル氏?」

 

 

 私は早速、この土地の歴史を調べはじめた。

 

 1865年、ノーベル氏はこの森の奥にてストックホルム・ニトログリセリン株式会社を設立した。

 実は設立の前の年、町中でグリセリンを精製している時に大きな爆発事故を起こしていたのだ。そして不運な事に、その事故により21歳の弟を始め、その場にいた助手を失ってしまっていた。

 

 下の写真は1984年に事故の起きた現場付近の1910年の様子である。

 町中には見えないかもしれないが左後方に住宅地が見られる。

 

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Fotograf Salin, Kasper (1856-1919)Skapad 1910Objekt-ID Stockholms stadsmuseum Fotonummer F 3809、https://stockholmskallan.stockholm.se/post/16220

 

 それでも爆発媒体の実験を続ける意向を持っていたノーベル氏は、森と湖と岩に囲まれたこの土地なら仮に事故が起きても、被害は最小限に抑えられると予測した。

 彼は近隣地域の同意書を添えてこの土地を購入を申請した。

 

 この一帯はWinterviken(冬の湾)と呼ばれる。

 この土地には現在、レジャー施設、花に囲まれるカフェ、爆発実験に使用した爆風穴、ボートクラブ、その他にも多くの見どころがある。

 

 ストックホルムの南に住んでいる人たちにとっては有名なところであるらしいのであるが、あまり南には出掛ける機会のない私にとっては全てが新鮮であった。

  

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  ここは百年以上の前の工場を見事に改造してある。

 どこがオリジナルでどこが改造されているのかなどに関してはとても興味があるが、それに関する資料は未だに見つからない。

 

 最近、上の写真の左端に見えるような家具を売る店を頻繁に見掛ける。

 工業スタイル(インダストリアル・スタイル)と称される形状と材質である。

 すなわち工場で使用されているような素材を使ったものであり、まったく媚びがない。

  

  1950年代、1960年代をイメージさせるようなハンバーガーレストランなどにもこのタイプの家具が置かれていることが多い。インダストリアル・スタイルと一言で言ってもいろいろ形状があり、アメリカン・ヴィンテージと呼ばれるものもある。

 

 例えば以下の棚は、おそらく実際には古いものではないのであろうが古く見せるような技巧が駆使されている。

    

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 棚と言えば、アメリカ映画に出て来るような高校のロッカーのヴィンテージになると一基、十万円ぐらいにものぼる時もある。

 「昔、物置にあったあの机、椅子、ロッカー、箱、保存して置けば良かったなあ、今、売れば一財産出来たのに」、などと後悔する人もいる。

 

 この階段の手すりなどもむき出しの金属であるが、その中にもデザイン性がある。

 

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 こちらはこの工場の二階であるが、木の柱を、やはりむき出しの金属で固定している。

 木の柱に関しては、ログハウスのような山荘の温かみはないかもしれないが、とても雰囲気がある。右の木の割れ目が何となく気になってしまったりするのであるが。

 

 この下の空間では結婚式等が催されることがある。

 80人の収容が可能。

 

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 ちなみに私の現在のマンションの照明器具はほとんどがインダストリアル・スタイルである。私は懐古情緒に溢れるこのスタイルがに入っているのであるが、柔和なスタイルを好む人の中には首を傾げる人たちもいる。

 

 知り合いのピアニストの若い青年に居間の照明の写真を見せたところ「好きなスタイルではない」とまゆをひそめられた。

 人の趣向だけは変えることは出来ないし、自分の趣向をお仕着せするつもりもない。

 

 こちらの椅子に関しては、私は趣があると思うが、こちらも賛否両論であろう。

 私は、素材としては真鍮(しんちゅう)が好きなのでこのタイプは購入しない。

 以前、彫刻の美しいアンティークの木椅子を一脚1500円から5000円で購入したことがある。多くのアンティーク家具の価格は昨今、廉価で購入できる。

 インダストリアル・スタイルの椅子は上記よりも高額である。

 トレンドというものは価格を吊り上げるものらしい。

 

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 このテーブルと椅子はインダストリアルに属しているのか否か、微妙なところである。ガーデン家具のようにも見える。

 上からぶら下がっている照明はインダストリアルであろう。

 壁から掛かっているものは裸電球をむき出しにしてあるところから、やはりインダストリアルであると思う。

 

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 下のスタイルはよくわからないがガーデン家具とインダストリーのハイブリッドといいう感じであろうか。

 どちらにせよ座り心地は悪そうである。

 

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 二階のこの木目調のテーブルはアメリカン・ヴィンテージであると思うが照明はどちらとも言えない。

 本来ならこのようなテーブルが欲しかったのであるが、築三年の白壁のマンションには残念だがしっくりとは合わないと思いあきらめた。

 

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  「一メートルは離れましょう」という注意書きまで何となくインダストリアルである。

 

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  売り場近くに掛かるランプは全てインダストリアルであると思うが、売られているものは一般的なスウェーデンのコーヒー菓子である。

 

  こちらでもガラスのショーウィンドウに入っているケーキなども時々見掛けるが、ショーウィンドウはインダストリアルにはそぐわないのかもしれない。

  

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  前述のように、この数年、このインダストリアルとアメリカン・ヴィンテージスタイル等を店頭で見掛けることが多い。

 しかし、北欧においても全ての一般家庭のインテリアにこのスタイルをマッチさせることが可能とは言えない。

 例えば、中世に建てられた中古マンションなどは天井や壁にロココ調の装飾が施されていたりするのでこちらを、インダストリアルに改造するわけにはいかない。

 さらに、たとえばウェッジウッド等の上品な陶器は金属むき出しのテーブルには合わなそうな印象を受ける。

 

 果たして、このスタイルの家具を日本の一般家庭では流行らせることは出来るであろうか。一つ言えることは、落ち着いた和陶器はインダストリアルのテーブルの上においても不思議と映える。

   

 こちらの大宴会場(Stora Salen)。

 中央に淋し気に置かれた宴会場用テーブル。これはノーベル賞晩餐会のテーブルを模倣しているのであろう。

 この宴会場では500人の座客を収容できる(ノーベル賞晩餐会は1300人前後レベル)。

  

  かつて硫酸工場であった時代には、この宴会場にはニトログリセリンの形成に重要な成分である硫酸用の大きな鉛被覆チャンバーと濃縮器があった。

 

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 この後もいろいろと興味深いところを案内していただき、この日の散歩はとても実りの多いものになった。

 かつて硫酸の匂いが充満していたであろうこの工場が、インダストリアル・スタイルの大集成の空間として温存されていたこと知ることも出来た。

 

 しかし、この日一番美しく嬉しく感じられたものはなんであったのか。

 友人の笑顔だ。

  五分おきに立ち止まり写真を撮っていた私を、彼女は不平一つ言わずに笑顔でずっと待っていてくれた。

 

 

 アルフレッド・ノーベル氏。

 死の商人と呼ばれながらも、人類に貢献した人たちのために築いた巨大の富を賞与として分けあたえる遺言を残した。

 そしてこの森の奥には、他にも紹介させて頂きたいノーベル氏の遺物が数多くある。

 硫酸工場が一世紀以上もあとにトレンディーなカフェに衣替えすることになろうとは、彼には想像も付かなかったことに違いない。

 果たして彼には、このカフェに一緒に座って雑談を出来るような友人はいたのであろうか。

 europanadeshiko.hatenablog.com

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 インテリアではありませんが北欧の外観を美しい紹介する動画を引用させて頂きたいと思います。

 

www.youtube.com

 

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